部屋を通り過ぎた 風が ふと 教えてくれた
父に親孝行しようと 思い立って 電話をした
私は 父と母と妻を連れて急遽 温泉に向かった
山の上の風は 涼しさが増して 秋を沢山
実らせ 黄色いろが目立つ
風景がまばらに見えた
私は 覚束ない 父の姿を見て あの頃の
父の逞しい漁師の体はもうない事を改めて
知ることになる…
背中は曲がり 頬はこけて 手には 痣が沢山
繋いだ手が 心なしか 微かに震えていた
シャワーをかけて、タオルで石鹸つけて
曲がりくねった人生のような浮き出た背中を
優しく洗いながら こう言った
”おまんのあの時の体はもうないね…
お父ちゃん”そうゆうと”そりゃそうよ”と
父が返してきた 何気無い会話に 周りの
男達が 耳を澄ませていた
この体に 支えてもらいながら 夢を見てきた
漁師の父親の潮で叩かれた 無駄のない
焦げた 体は もうないのだ
詰まる思いがこみ上げてきて シャワーで
涙を流す私は 父の手を繋いで 外の露天風呂に
いった 狭い空間の中に吹き抜けた天井を
見ながら 角にある 蜘蛛の巣が目に止まる
優しく風に揺れながら 私まで 揺れている
そうゆう不思議な 感覚
二人で ただ黙って 時間を楽しみながら
晴れ渡る 秋の香りのする空を見上げていた…
詩人〜今人…
私は よく小さい頃に作ってくれた
卵焼きが好きだった…
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